院長コラム

新型コロナウィルス感染症の現時点でのまとめ(2021年1月)

横浜市における新型コロナウィルス感染症 受診・相談の流れです。

プライマリ・ケア医療機関(町の診療所)の役割とは?

当院のようなプライマリケア・クリニック(町の診療所)が行うべき大事なことは、

  1. 地域住⺠の皆様や患者さんに,感染拡⼤防⽌と健康被害を最⼩限にするための啓発を⾏うこと(ホームページやSNS等での広報活動含む)
  2. 発熱等の症状がある患者さんに,適切に診断治療を⾏うこと
  3. 私たち医療従事者⾃⾝が,新型コロナウイルスに感染しないよう努めること

と考えています。
なかでも、大事なのは2.です。すべての発熱患者さんに対して新型コロナウイルス感染症の有無を明らかにすることは主たる役割ではありません。
プライマリ・ケアの役割は,疾患をある程度鑑別し、新型コロナウイルス感染症によって重症化のおそれがある患者さんを,適切なタイミングで高次医療機関(感染症指定医療機関又は協力医療機関等)に転送することです。
したがって,検査を繰り返し依頼する等で2次、3次医療機関や発熱外来に過大な負担をかけないよう配慮することが求められます。場所によっては、問い合わせの電話が連日殺到して繋がりにくくなっているところもあります。町の診療所も新型コロナウイルス感染症の最前線で適切に連携すべき機関であることを認識して頂きたいと思います。

新型コロナウィルス感染症、現時点で判明していること

エンベロープにある突起が王冠(ギリシア語でコロナ)のように見える.SARS の病原体(SARS-CoV-1)と同様にアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)をレセプターとしてヒトの細胞に侵入します。3 日間程度は環境表面で安定と考えられています。

1)伝播様式

感染経路

飛沫感染が主体と考えられ,換気の悪い環境では,咳やくしゃみなどがなくても感染すると考えられています。また,ウイルスを含む飛沫などによって汚染された環境表面からの接触感染もあると考えらています。有症者が感染伝播の主体ですが,発症前の潜伏期にある感染者を含む無症状病原体保有者からの感染リスクもあります。

エアロゾル感染

エアロゾル感染は厳密な定義がない状況にあります。新型コロナウィルスは密閉された空間において短距離でのエアロゾル感染を示唆する報告がありますが,流行への影響は明らかではなく、患者病室などの空間から培養可能なウイルスが検出された報告がある一方,空気予防策なしに診療を行った医療従事者への二次感染がなかったとする報告もあります。

潜伏期・感染可能期間

潜伏期は1~14 日間であり,曝露から5日程度で発症することが多い(WHO)とされています。発症前から感染性があり, 発症から間もない時期の感染性が高いことが市中感染の原因となっており, SARS やMERS と異なる特徴でもあります。

新型コロナウィルスは上気道と下気道で増殖していると考えられ,重症例ではウイルス量が多く,排泄期間も長い傾向にあります。発症から3~4週間,病原体遺伝子が検出されることはまれではありません。
(ただし, 病原体遺伝子が検出されることと感染性があることは同義ではありません)
感染可能期間は発症2 日前から発症後7~10 日間程度(積極的疫学調査では隔離されるまで)と考えられています。 なお,血液,尿,便から感染性のある新型コロナウィルスが検出されることはまれです。 

2)臨床像

初期症状は インフルエンザや感冒に似ており,この時期にこれらと新型コロナウィルスを区別することは困難です。本邦における入院を要した新型コロナウィルス感染症症例のレジストリ(COVIREGI-JP)の2,600 例の解析によると,入院までの中央値は7日であり,頻度が高い症状は発熱,咳嗽,倦怠感,呼吸困難でした。下痢は約1割にみられました。一躍有名になった味覚障害(17.1%),嗅覚障害(15.1%)は海外の報告よりも頻度が低いとされています。多彩な皮膚所見は白色人種に多く報告されています。COVIREGI-JP のデータでは,入院を要した2,600 例のうち酸素投与を要しない症例が62%,酸素投与を要した症例が30%,人工呼吸管理やECMO による集中治療を要した症例が9%であり,このうち7.5% が死亡しています。入院期間の中央値は15日でした

新型コロナウイルス感染症を疑い鑑別に挙げるのは,どのような場合でしょうか。
以下3点を考えます。

  • 地域で新型コロナウイルス感染症が流行している状況において、上気道炎または肺炎の患者さんを認めたとき
  • 新型コロナウイルス感染症の患者さんとの接触歴がある, または国内外の流行地域からの渡航歴があるとき
  • 他に診断のつかない肺炎を認めたとき

なお, 血液検査での感染徴候の所見及び胸部レントゲン写真で両側性肺炎を認めた場合、 新型コロナウイルス感染症を強く疑います。
したがって,高齢者及び基礎疾患(糖尿病,心不全,腎障害,人工透析,生物学的製剤投与,化学療法及び免疫抑制剤投与等)を有する患者さんでは,感冒様症状を呈した場合は慎重に経過観察する必要があります。その上で症状悪化時には速やかに高次医療につなげ,死亡を回避することが重要となります。
一方,確定診断された小児(18歳以下)2,141例の臨床プロファイルによると, 55%が無症状もしくは軽症であり, 39%が肺炎を認める中等症とされ, 5%が低酸素の所見を認める重症に至ったが, 生命を脅かす臓器不全に陥ったのは1%未満であったと報告しています。 このうち死亡したのは, 14歳男児の1例のみでした。

3)重症化のリスク因子

COVIREGI-JP のデータでは,うっ血性心不全,末梢動脈疾患,慢性閉塞性肺疾患(COPD),軽度糖尿病は登録された入院患者全体に占める割合と比べて,中等症,重症に占める割合の方が多いことから,重症化のリスク因子の可能性が高いと考えられています。
【参考】国立国際医療研究センター. COVID-19 レジストリ研究に関する 中間報告について.

4)後遺症

患者さんによっては,新型コロナウィルス感染症の急性期症状が遷延(長引く)することがわかってきています。現時点では,感染者のみを対象とした横断研究が中心ですが,非感染者を対照群とした疫学研究は不足しているため,それぞれの症状と新型コロナウィルス感染症との因果関係は不明です。

イタリアにおける143 人の患者調査では,回復後(発症から平均2 カ月後)に87% が何らかの症状を訴えており,特に倦怠感や呼吸困難の頻度が高いとわかっています。その他,関節痛,胸痛,咳嗽,嗅覚障害,目や口の乾燥,鼻炎,結膜充血,味覚障害,頭痛,喀痰,食欲不振,咽頭痛,めまい,筋肉痛,下痢などの症状がみられるようです。32%の患者さんで1~2つの症状があり,55%の患者さんで3つ以上の症状がみられています。

米国での電話調査では,270人の患者のうち,65%が検査日から中央値7日で普段の健康状態に復帰し,35%が診断から2~3週間経過後も「普段の健康状態に戻っていない」と回答しています。高齢者や基礎疾患のある人で症状が遷延しやすい傾向にありました。

フランスの電話調査では120 人の回復者(発症から約110 日後)のうち,約30%に記憶障害,睡眠障害,集中力低下などの症状がみられました。

日本における電話調査では,発症から60日経った後にも嗅覚障害(19.4%),呼吸困難(17.5%),倦怠感(15.9%),咳嗽(7.9%),味覚障害(4.8%) があり,さらに発症から120日経った後にも呼吸困難(11.1%),嗅覚障害(9.7%),倦怠感(9.5%),咳嗽(6.3%), 味覚異常(1.7%)を認めています。

5)家族内感染率

韓国において2020年1月20日~ 5月13日までに報告された10,962 例のうち,5,706例の発端症例を対象に接触者追跡調査が実施されました。調査対象となった接触者は,家族内が10,592 例,家族外が48,481 例であり,平均9.9日間の健康観察が実施されています。家族内感染率は11.8%(1,248/10,592)であったのに対し家族以外の接触者感染率は 1.9%(921/48,481)に留まりました。発端者が10 歳代での家族内感染率は18.6%(43/231)と高く,成人と同等以上でした(20 歳代:7.0%,30 歳代:11.6%,40 歳代:11.8%,50 歳代:14.7%,60 歳代:17.0%,70 歳代:18.0%,80 歳以上:14.4%)。一方で0~9歳の発端者からの家族内感染率は5.3%(3/57)と最も低いデータが出ています.家族以外では,40 歳以上の発端者からの感染率が有意に高く,小児では0~9歳で1.1%(2/180),10歳代で0.9%(2/226)と低かったデータが出ています。

この結果から家庭においてもマスク着用,手指衛生などの個人予防策を遵守して感染予防を推奨する必要があると考えます

まとめとして、こちらも参照してください

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