風邪をひいたときの効果的な漢方薬の飲み方
もっとも有名な漢方薬は「葛根湯」だと思います。 外来においても、風邪をひいた患者さんが、「葛根湯を買って飲みました」とよく聞きます。 そして、外来あるあるですが「葛根湯買っても効かなかった」ともよく言われます。
漢方には即効性と遅効性の生薬があり、葛根湯は比較的即効性の高い方剤と考えています。 では、なぜ効かなかったのでしょうか。漢方の特徴をひと言で表すとしたら、「多様性」です。
また、以下のような特徴があります。
- 漢方薬はさまざまな生薬を複合的に組み合わせた薬である
- 一剤でいろいろな症状を解消したり、和らげたりすることがある
- 病態やその人の体質に合わせて、さまざまな漢方薬が用いられる
- 即効性タイプの漢方薬と、遅効性タイプの漢方薬がある
- 同じ病気でも、発症してからの経過日数、症状によって用いられる漢方薬が異なる
「効かなかった」場合、上記の3及び5によるものが大きいと思われます。
ここでは、葛根湯を例に挙げましたので、典型的な風邪症候群をひいたときに、効果的に漢方を効かせるコツ(方法)をお話したいと思います。 (市販の葛根湯でも以下の要領で試してみてください)
ポイントは3点です。
その1:「湯」と書いてある漢方はお湯に溶いて飲む。同時に2袋服薬でもOK。
その2:汗が出るまで服薬。汗が出たら服薬中止。食後服薬はナンセンス。
その3:胃腸に負担がかかる食事は控える(消化の良いものを摂る)。
以上の3点です。
解説します。
その1:「湯」と書いてある漢方はお湯に溶いて飲む。
同時に2袋服薬でもOK。できれば、コップ1杯ほどの湯に溶いてください。漢方の風邪薬は体を温めて発汗を促すように処方が組まれています。飲んだ後は、しっかり布団に入って寝ましょう。
その2:汗が出るまで服薬。
汗が出たら服薬中止。食後服薬はナンセンス。全身から汗がにじむ程度であれば完璧です。 したたるほどの汗をかくのは、よくありません。逆に治りが悪くなりますし、発汗が過ぎると動悸や足がつったりするので、適度な発汗を心がけてましょう。
また、生薬が合わさった漢方薬は、クスリが吸収されやすい空腹時に飲むことで、効果がよく現われます。おススメは起床時、15時、就寝前です。
その3:胃腸に負担がかかる食事は控える
風邪をひいたときは、食欲がなければ無理して食べなくてもかまいません。 食べる場合は、温かいあっさりしたものを食べるように心がけて下さい。 外来でお話を伺うと、栄養をたっぷり摂らないといけないとお考えの方が意外と多いです。
しかしながら、それは逆効果です。 風邪をひいたときは自然治癒力を高めないといけません。 栄養たっぷりの食事は、消化活動にエネルギーを割かなくてはなりません。自然治癒力を高める邪魔をしてしまうのです。 それゆえに、必要以上に栄養を摂る必要はありません。 以下の食事を控えて、温かいあっさりしたものを食べましょう。
風邪をひいたときのNG
(もちろん、摂ることによって気分がリフレッシュすることは大事なので完全にダメというわけではありません)
- 冷たい飲食物
- ねばねば・ぬるぬる系
- 脂の多い食事、肉
- 酒
- 乳製品全般
最後に補足です。
一般の薬局で販売されている漢方薬と当院のような診療所で健康保険にて処方する漢方薬は同じ?という疑問ですが、ツムラさんの生薬成分は一緒です。
健康保険適用の漢方薬(医療用漢方製剤)が医師の診察に基づき選択されるのに対し、薬局で売っている漢方薬(一般用漢方製剤)は、自身の自由な選択で誰でも服用可能となっています。
ツムラさんは、この違いをふまえた上で一般用漢方製剤の安全性をより高めることを考慮し、1日の服用量を調整しているようです。そのため、服用量が市販と処方とで異なる場合があります。
(当院の処方箋はツムラの漢方で処方しています)