院長コラム

インフルエンザの予防接種について

1.インフルエンザ予防接種ワクチンを打つべきかどうか。

インフルエンザワクチンには効果があり、接種を毎年受けたほうがいいということは厚生労働省やアメリカ疾病対策センター(CDC)で報告されています。
WHO(世界保健機構)も発症や重症化を防ぐにはインフルエンザワクチンが最も効果的だと公表しています。
https://www.who.int/en/news-room/fact-sheets/detail/influenza-(seasonal)
よくある誤解の一つが「ワクチンには効果がない」という誤解です。ワクチンを理解するには「感染」と「発症」を分けて考える必要があります。インフルエンザワクチンを接種してもウィルスが体に入り込むことは防げません。気道内にウィルスが侵入すると、それを防御するのは粘膜免疫になります。これを突破されると、体に侵入してきます。
要するに、インフルエンザワクチンを接種しても感染はします。ワクチンはここからの勝負で、ワクチンを接種していると免疫のスイッチが入り、結果として発症を抑えます。
しかし、子どもや高齢者のように免疫の働きが不十分な場合、たとえワクチンを接種していても症状が生じます。しかし、症状は予防接種していない場合より軽減されます。

個人的に一番困るのは「個人の経験談」(TVのダイエット検証なんかもそうです)です。個人の経験談はエビデンス(医療行為において治療法を選択する際「確率的な情報」として、少しでも多くの患者さんにとって安全で効果のある治療方法を選ぶ際の指針)にはなりません。
統計においては個人の経験はなんのエビデンスにもなりません。
「あの人が~言っていたから」
「あの人は~をしたから効いた」
「テレビで~が効果あるらしい」
すべて個人の経験です。よくTVCM画面の端っこに「これは個人の感想です」と出ているのと同じです。
予防接種における効果は「大規模な研究による統計処理での確認」において証明されています。

以下に文献を提示します。

①Nichol K L, et al: The effectiveness of vaccination against influenza in healthy, working adults. N Engl J Med 333(14) 889-893, 1995 Oct 5.
米国ミネソタで1994年秋18-64歳の健康な成人849人を選び、ワクチン接種群とプラセボ接種群とで、比較。健康成人に対するワクチン接種は、健康対策上及び経済的に有用と結論。

②Ahmed A E, et al: Reduction in mortality associated with influenza vacctine during 1989-90 epidemic. Lancet 346(8975):591-595 1995 Sep 2.
England 36地区保健所管内において1989年11月4日~1990年2月23日な間にインフルエンザにより死亡した16歳以上315例の患者群と777例の対照群を解析。インフルエンザワクチンは、死亡率を41%低下させたと、結論。(初回接種のみでは9%2回目以降では75%の減少率と差があり、2回目以降の追加接種は、効果ありとしている。)

③Govaert T M, et al: The efficacy of influenza vaccination in elderly individuals. A randomized double-blind placebo-controlled trial. JAMA 272(21): 1661-1665, 1994 Dec 7.
オランダで、ハイリスクではない高齢者1800人について、ワクチン接種群とプラセボ接種群を比較。血清診断によるワクチン接種群とプラセボ接種群との比較は、罹患率、臨床症状出現率いずれも有意差あり。

④Sugaya N, et al: Efficacy of inactivated vaccin in preventing antigenivally drifted influenza type A and well-matched type B. JAMA 272(14):1122-1126, 1994 Oct 12.
1992-1993年の日本の都市部の小児喘息病院の137例の中等から重症の喘息患者が対象。そのうち、85名がワクチン接種し、52名が未接種であった。A型インフルエンザに対しては、抗原変異が大きかったにもかかわらず、防御効果は、67.5%(p<0.01)、B型インフルエンザに対しては、抗原的にほぼ同一であったにもかかわらず、防御効果は43.7%(p=0.01)であり、7歳未満小児に対する防御効果は、乏しかった。A型H3N2に対しては、抗原変異にもかかわらず効果があるが、B型に対しては、効果不十分という結論。

⑤Govaert Th M E, et al: Immune response to influenza vaccination of elderly people, A randomized double-blind placebo-controlled trial. Vactine 12: 1185-1189, 1994.
抗体獲得能について、オランダで、60歳以上、1383例を対象として、1991-1992年の流行期に、ランダム抽出二重盲検プラセボ対照試験を実施。A型2種、B型2種を含むワクチンあるいはプラセボ接種3週間後に採血。ワクチン接種者の43-68%で防御抗体を獲得していた。心疾患、肺疾患、糖尿病等の合併症がある人でも抗体獲得は良好。インフルエンザ罹患の頻度を減少させるかどうかは、検討していない。

⑥神谷齊他: 高齢者のインフルエンザワクチンに対する効果に関する研究 厚生省厚生科学研究報告
新潟県、名古屋市、大阪府、福岡県、三重県の老人福祉施設・病院に入所もしくは入院している65歳以上の高齢者の中から、調査に協力を申し出ていただいた方。
インフルエンザを契機とした死亡相対危険 0.18 (82%の有効率)、抗体価も接種群で、上昇が得られた。

結論としては、
「インフルエンザの予防接種は打つべき、ただし、効果は確率論」、となります。

2.ワクチンを接種すべき人とは?

基本、どなたでも打つべきですが、積極的に打つべき人がいます。

①高齢者
65歳以上の高齢者(今や、この年齢で高齢と言っていいものかどうか)、60~64歳で心臓、腎臓もしくは呼吸器機能またはヒト免疫不全ウィルスによる免疫機能に障害を有する人(身体障碍者手帳1級程度)は、国から「定期接種」の対象になっています。
ワクチンによる強い副反応が出たことがある人以外は接種すべきです。

子ども(乳幼児)、子どもの親と高齢者の介護者
集団免疫の考えから、家族が予防接種を受けることは発生予防に有効です。

③感染を拡大させてしまう可能性がある人
医療・介護関係者はもちろんですが、子どもたちに接する機会の多い教職員の方々も積極的な予防接種推奨対象です。しかしながら、外来で教職員の方をインフルエンザの診察で接する機会が多く、「予防接種していません」とはっきりと言われるので接種率の低さを実感します。「お願いだから、打ってくださいね・・・」は心の声です。

3.インフルエンザ、いつ打つべきか?

インフルエンザワクチンの効果発現と持続時間には個人差があります。一般には、接種後2週間目から効果が発現し5か月ほど効果が持続すると言われています。
では、いつ打つべきかというと「流行の傾向と対策」を考える必要があります。
下図は2014年からの神奈川県での流行推移です。

これを見ると、例年の「傾向と対策」がわかります。
46週以降から増え始め、年末年始にめけて一気に増えています。
これは、神奈川県における傾向と対策ですが、「早いときは11月中旬から、遅いときは年末年始」が流行時期です。
つまり、この時期に合わせた予防接種のスケジューリングが良い、となります。

インフルエンザ予防接種の効果発現に2~3週かかることを想定すると、「10月下旬から11月中旬」が予防接種に最適の時期と考えらえます。

当院では毎年概ね10月初旬からインフルエンザ予防接種の予約が始まります。
毎週土曜の午後に接種を行いますので、上記の時期に合わせたスケジューリングで予約していただくことをお勧めします。

 

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