院長コラム

高血圧のお話

11月に入り、朝はだいぶ寒くなってきました。これから冬を迎えるにあたり、血圧トラブルの相談が外来でも増えてきました。今回は生活習慣病御三家の1つである高血圧についてです。

現在の高血圧治療は、家庭血圧や24時間自由行動下血圧測定(ABPM)など診察室以外で測定した血圧を重要視するようになっています。

高血圧診断は診察室血圧と診察室外血圧による2つの状況で、正常血圧、白衣高血圧、仮面高血圧、持続性高血圧の4つに分類されます。いわゆる「高血圧」は診察室外血圧に基づく高血圧です。この血圧4分類のなかで、高血圧診療上のネックとなるのが仮面高血圧です。診療上診察室血圧が常に正常で、診察室外の血圧が高値を示す状態を「仮面高血圧」と定義しています。
診断は、

複数回測定した診察室血圧の平均が 140/90mmHg 未満
かつ、
診察室以外で複数回測定した血圧(診察室外血圧)の昼間血圧が 135/85 mmHg 以上
もしくは、
夜間含む昼夜平均(平均昼夜血圧)または平均24時間血圧が 130/80 mmHg以上


です。

仮面高血圧の頻度は、正常血圧の一般住民では 10~15%程度ですが、降圧療法中の高血圧患者さんでは3~4倍も増加し、140/90mmHg 未満にコントロール良好な降圧治療中の高血圧患者さんの30~50%にみられます。このことは、診察室血圧に基づく通常の降圧療法では、診察室血圧は低下しても他の時間帯の血圧低下は十分でないことから、高血圧が潜伏することを示しています。

仮面高血圧患者さんの臓器障害と心血管イベントのリスクは正常血圧や白衣高血圧患者さんと比較して有意に高く、持続性高血圧患者さんと同程度以上です。これまでの臨床研究では、仮面高血圧患者さんは正常血圧群に比べて代謝異常を伴いやすく、未治療群や治療中高血圧患者さんにかかわらず、左室肥大や頸動脈肥厚などの高血圧性臓器障害が進行しています。

地域一般住民の方々や治療中の高血圧患者さんを対象とした追跡研究においても、正常血圧者に比較した仮面高血圧患者さんの心血管疾患の相対的発症リスクは2~3倍程度であり、持続性高血圧と同程度です。しかし、治療中高血圧患者さんの仮面高血圧では,家庭血圧に基づく降圧治療を行わない限り、そのリスクが見過ごされ、持続性高血圧患者さんよりも予後が悪い可能性が指摘されています。これが、高血圧を放置するとマズイ理由です。

仮面高血圧・・・・3つの仮面!?

  1. 早朝高血圧
  2. ストレス性高血圧
  3. 夜間高血圧

3つの仮面高血圧の表現型は、それぞれの背景となる関連病態が異なります。

早朝高血圧 早朝血圧135/85mmHg
ストレス性高血圧 日常ストレス状況下血圧135/85mmHg
夜間高血圧 夜間血圧120/70mmHg

これらの仮面高血圧のタイプにより異なる昇圧時間帯は、24時間の血圧日内変動が障害された病態から発生しています。

1. 早朝高血圧

家庭血圧の基準値は 130/80mmHg であることから、早朝に測定した血圧平均値が 130/80mmHg以上を早朝高血圧としています。早朝には心血管イベントが多く、同様に血圧も夜間から早朝にかけて上昇する日内変動を示します。早朝血圧は脳・心臓・腎臓、すべての心血管リスクと有意に関連しています。さらに、降圧療法中の高血圧患者さんでは診察室血圧は良好にコントロールされていても、薬剤服用直前の早朝に最も降圧効果が減少していることが多くみられます。

早朝高血圧には夜間高血圧から移行するタイプと朝方に急に血圧が上昇するサージ型があり、この両者はともに心血管リスクとなることを示す研究成績が集積されつつあります。夜間から早朝にかけては、圧受容体反射の影響を受けて自律神経や血圧の変動が最も増大する時間帯で、早朝の血圧レベルの高値に加え、早朝の血圧変動の増大や夜間から早朝にかけて上昇する血圧モーニングサージも、24時間血圧レベルとは独立して心血管イベントや臓器障害のリスクとなると考えられています。

2. 夜間高血圧

夜間血圧の基準閾値が 120/70 mmHg 以上の場合に,夜間高血圧とされます。
24時間自由行動下血圧測定(ABPM)で評価した昼間血圧に対して夜間血圧の低下が 0~10%である場合に Non-dipper、逆に夜間に血圧上昇を示す場合に Riserと定義しています。

正常の血圧日内変動では、夜間血圧は昼間の覚醒時に比較して 10~20%低下します。この適度の夜間血圧を示す正常型をDipper型といいます。Dipperのうち夜間レベルが昼間レベルより20%以上低下するものをextreme-dipperと定義しています。Non-dipper 型、Riser 型では、正常 Dipper 型に比較して、脳、心臓、腎臓のすべての臓器障害と心血管イベント、ならびに心血管死亡のリスクが高いことが知られています。

ある報告では、白衣高血圧を除いた持続性高血圧患者さん(24時間血圧≧130/80mmHg)では無症候性脳梗塞はRiser型で増加しており、その後の追跡においても、脳卒中の発症リスクが増加していました。さらに、他のパターンに比較してもRiser型では脳卒中は約2倍、突然死を含む心臓イベントは約6倍のリスクになっていました。また、睡眠時間の短縮は Riser 型と相乗的に心血管リスクを増加させることもわかっています。こうしたことから血圧日内変動異常は、心血管リスクを増加させると考えられています。

治療のはじまり

仮面高血圧の診療のはじまりは、まず家庭血圧を測定することから始まります。
家庭内血圧の測定は、当院では次のように外来でお話ししています。

測定は1日2機会、1機会につき2回測定の平均値を血圧としてノートに記帳してください。2機会の内訳は、1機会目:起床してお小水をされた後に測定。2機会目:就寝前のリラックスした時間に測定。それぞれ2回ずつ計測して、その平均値が家庭血圧です。


(2009年の資料なので早朝血圧の数字が135/85mmHgとなっています)

仮面高血圧のハイリスク群は、降圧療法中にあるすべての高血圧患者さん、正常高値血圧(130/85~139/89 mmHg)、喫煙者,アルコール多飲、精神的ストレス(職場,家庭)が高い者、身体活動度が高い者、心拍数の多い者、起立性血圧変動異常(起立性高血圧,起立性低血圧)、肥満・メタボリックシンドロームや糖尿病を有する患者さん、臓器障害(特に左室肥大)や心血管疾患の合併例などです。これらの対象者には診察室血圧にかかわらず、積極的に家庭血圧計で早朝血圧を測定することが重要です。

就寝前血圧は測定できますが、夜間血圧は、頻回に評価することができないことに加え、夜間高血圧のみを治療ターゲットとした高血圧治療の有用性を示す論文集積は十分ではないことから、薬物治療においては早朝高血圧を治療ターゲットにした就寝前の降圧薬投与が推奨されています(もちろん、現時点の外来診療では、高血圧の治療は「食事+運動+薬物」の3本の矢です)。そして外来受診する患者さんのタイプによって使う薬剤や濃度は変わります。洋服にも夏服と冬服があるように、血圧にも季節性変動があり夏と冬で薬剤を変更することが多々あります。

降圧目標は下表の通りです。

高血圧については減塩も大事なので、その話については次回にします。

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