腎臓って、大事なんです・・・
毎年3月の第2木曜日は世界腎臓デーです。
世界腎臓デー(WKD)とは、腎臓病の早期発見と予防を促し、腎臓病による負担を世界的に縮小することを目的に、国際腎臓学会(ISN)と米国腎臓財団(IFKF)が2006年に設立されました。
外来で患者さんとお話ししていて実感することは腎臓についての危機感が希薄である方が多いことです。
メタボ、糖尿病、心筋梗塞、脳梗塞、がん・・・に比べると腎臓の影が決定的にうすいのです。
CKDという言葉を学会は啓蒙中ですが、残念ながらロコモと同じで浸透しているとは言いがたいです。
ちょっと影の薄い腎臓についてまとめました。
慢性腎臓病(CKD:Chronic kidney Disease)について
慢性腎臓病(CKD)とは慢性に経過するすべての腎臓病を指します。
あまり耳にしないかもしれませんが、実は患者さんは1,330万人(20歳以上の成人の8人に1人)いると考えられ、新たな国民病ともいわれています。
CKDはメタボリックシンドロームとの関連が深く、誰でもかかる可能性があります。 腎臓は体を正常な状態に保つ重要な役割を担っているため、CKDによって腎臓の機能が低下し続けることで、さまざまなリスクが発生します。
どのようなリスクが生じるかというと、腎臓が司る大事な働きが軒並み壊されてしまうと言うことです。最終的な悪化のゴールは末期腎不全に伴う透析や腎移植です。
CKDは高血圧、脂質異常、糖尿病と同じく、疾患の四天王なのです。
腎臓の働きとは?
腎臓は身体を正常に保つ働きを持つ大切な臓器です。
腎臓は、そらまめのような形をした握りこぶしくらいの大きさの臓器で、腰のあたりに左右対称に2個あります。
腎臓の働きは大きく5つです。
「老廃物を身体から出すこと」をご存じの方は多いのですが、2.以下はほとんど知られていないのではないでしょうか。
- 老廃物を身体から出す
- 血圧を調整する
- 血液を作る司令塔
- 体液量・イオンバランスを整える
- .強い骨を作る
1. 老廃物を身体から出す
腎臓は血液を濾過して老廃物や余分な塩分を尿として体の外へ排出してくれます。
また、体に必要なものは再吸収し、体内に留める働きをしています。
腎臓の働きが悪くなると尿が出なくなり、老廃物などが体に蓄積し尿毒症になるおそれがあります。この働きが悪くなると、排出されない老廃物が体に悪い影響を与え、さまざまな病気の原因になる可能性があります。
2. 血圧を調整する
腎臓は、塩分と水分の排出量をコントロールすることによって血圧を調整しています。
血圧が高いときは、塩分と水分の排出量を増加させることで血圧を下げ、血圧が低いときは、塩分と水分の排出量を減少させることで血圧を上げます。また、腎臓は血圧を維持するホルモンを分泌し、血圧が低いときに血圧を上げます。
腎臓と血圧は密接に関係し、腎臓の働きの低下によって高血圧になることもあります。
また、高血圧症は腎臓に負担をかけ、腎臓の働きを悪化させることもあります。
高血圧症は、生活習慣病として知られていますが、 実はCKDも生活習慣病と深い関わりがあります。
3. 血液を作る司令塔
血液(赤血球)は骨髄の中にある細胞が、腎臓から出るホルモン(エリスロポエチン)の刺激を受けてつくられます。腎臓の働きが悪くなると、このホルモンが出てこなくなってしまうため、血液が十分につくられず貧血になることがあります→腎性貧血
4.体液量・イオンバランスを整える
腎臓は体内の体液量やイオンバランスを調節し、体に必要なミネラルを体内に取り込む役割も担っています。腎臓が悪くなると体液量の調節がうまくいかないため、体のむくみにつながります。 また、イオンバランスがくずれると、疲れやめまいなど、体にさまざまな不調が現れることがあります。貧血やむくみは体からのSOSのサインです。
ところで、外来で電解質(イオン)についてお話しすると、怪訝そうな顔をされます。
そもそもイオンってなんだ?ということにも触れておきます。
身体の水分、つまり体液には「電解質(イオン)」が含まれています。電解質(イオン)とは、水に溶けると電気を通す物質のことです。電解質は水中では電気を帯びたイオンになり、電気を通すようになります。
この電解質(イオン)は、細胞の浸透圧を調節し、筋肉細胞や神経細胞の働きに関わるなど、身体にとって重要な役割を果たしています。電解質(イオン)は少なすぎても多すぎても細胞や臓器の機能が低下し、命にかかわることがあります。
主な電解質(イオン)には、ナトリウムやクロール、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどがあります。これらは5大栄養素としてあげられるミネラルに属し、ミネラルは水に溶けると陽イオンと陰イオンに分かれます。例えば、塩化ナトリウム(NaCl)は、水に溶けるとナトリウムイオン(陽イオン)とクロールイオン(陰イオン)になります。
5.強い骨を作る
骨の発育には複数の臓器が関わっています。その中でも腎臓は、カルシウムを体内に吸収させるのに必要な活性型ビタミンDをつくっています。腎臓の働きが悪くなると活性型ビタミンDが低下し、カルシウムが吸収されなくなって骨が弱くなるなどの症状が出てくるおそれがあります。
少しでも、腎臓が大事な臓器、全身と関連づけられている臓器と知って頂けたら幸いです。
ちなみに・・・一度障害を受けた腎臓を再生させるような薬はまだありません。
(急激に進行した腎障害の場合は除く。)
腎臓をこれ以上悪くならないように保護する薬や、腎機能低下が原因で起きる合併症を予防する薬はあります。
腎臓を保護する薬の代表は以下の2つです。
RAS系阻害薬(ACE/ARB)
SGLT-2阻害薬
(RAS系阻害薬は、血圧の薬の一種です。SGLT-2阻害薬は血糖を下げる糖尿病の薬の一種です)