院長コラム

高齢者の眠れない問題

人生のおよそ3分の1を占める「睡眠」。健やかな毎日のために睡眠がいかに大切かは、誰もが分かっていることと思います。にもかかわらず、「眠れない」悩みを抱える人は増え続け、今や睡眠障害は国民病ともいわれるほどになっています。5人に1人が睡眠について何らかの悩みを抱えていることがわかりました。睡眠障害の中で、代表的なものといえば不眠症です。不眠といっても人によって症状はさまざまです。

  1. 入眠障害;寝つきが悪くなる
  2. 熟眠障害;熟眠できなくなる
  3. 中途覚醒;途中で何度も目が覚める
  4. 早朝覚醒;朝早く目が覚める

の4タイプです。

日本人に多いのは入眠障害で、約60%がこのタイプです。次に多いのが中途覚醒の約27%で、近年このタイプが増えています。ちなみに、症状があれば不眠症というわけではなく、日中の苦痛や集中力低下など、日常生活に影響がでてからはじめて、不眠症の診断を下します。「不眠」と「不眠症」は違うと言うことです。

外来でひときわ多く相談を受けるのが高齢者の方の不眠です。

「最近、眠れなくって」「眠ってもすぐに目が覚めてしまう」「寝た気がしない」・・・不眠は加齢とともに増える傾向があり、特に女性は不眠症が多いです。

高齢者の不眠は何が原因なのでしょうか?

高齢者の不眠の原因といえば、まず挙げられるのが日中の活動量の低下です。

しかし、それだけが問題ではありません。年齢を重ねれば、高血圧、糖尿病といった生活習慣病をはじめ、さまざま基礎疾患を合併するようになり、それが不眠につながるといわれています。また、精神疾患との関わりも強く、認知症、うつ病などの方も睡眠障害が認められやすいです。

そして高齢者の不眠には共通の特徴があります。これは不眠以外にも便秘でもそうなのですが、それは「眠れないことへの不安、焦りが非常に強いこと」です。

お年を召されるにつれ、睡眠時間が短くなっていくのはごく自然なことです。この加齢と共に減っていく睡眠時間のメカニズムで大きなポイントが1つあります。65歳を過ぎると睡眠時間の平均は6時間を切ります。若年成人に比べて、深い睡眠割合の減少、浅い睡眠割合の増加により夜中に目が覚めてしまう中途覚醒が増え、全睡眠時間の短縮と、睡眠 効率(臥床している時間のうち実際眠っている時間の割合)の悪化がおこります。そうであるのにかかわらず、しっかり寝ようと思い、長い時間床の中に入ります。これが睡眠習慣を悪化させます。つまり、床に入る時間を遅くして、睡眠時間を調整すること、体を動かすことを意識するだけでも不眠は改善することが多いです。

不眠に対する治療のポイント

薬物療法を開始する前に ①症状把握、②治療の要否判定、③睡眠衛生指導、④リスク評価のステップを踏むことが必要です。

睡眠衛生指導というのは下記のチェックポイントです。

  1. 朝、起きたら太陽を浴びる(太陽光を浴びると体内時計がリセットされ、夜、自然に眠くなるように睡眠リズムが整ってきます)
  2. 夕方以降は激しい運動を控える(寝る時間帯になっても興奮状態が続いてしまい、目が冴えてしまう)
  3. 寝る前にカフェインを摂らない(カフェインには覚醒作用があり、寝つきが悪くなるだけでなく睡眠の質低下にもつながります)
  4. テレビ、ラジオ、スマホは寝る1時間前まで(脳を刺激するため、寝る直前まで見ていると眠くなりづらくなります)
  5. 禁煙(タバコに含まれるニコチンには、カフェインと同様の覚醒作用があります)
  6. 眠気がないのに早い時刻から床に入るのはやめる
  7. 昼寝をする場合は「どんなに長くても1時間以内」にしましょう。

リスク評価では、睡眠薬の長期服用に陥りやすいか否かについて事前に評価を行うことが必要です。重度の不眠、抗不安薬の服用、高齢、合併症の存在、ストレスの存在、薬物依存の履歴、アルコールとの併用、性格特性(受動的・依存的・ 慢性不安・心気的)などの有無を確認し、必要に応じ専門診療科との連携を考慮します。

若いときのように眠れないことに不安を感じ、どうしようと焦ってしまう方が多いのもわかります。少しでも眠れないと、不安を感じたり、焦ったり、イライラしたりして神経が高ぶり、余計に眠れなくなるという悪循環を引き起こしてしまいます。

不眠に対し、どういったときにクスリを使い、なにを使うか?

不眠症治療は加齢による生理的変化の不眠を除き、不眠の原因があればそれに対応し、 明らかな原因が見当たらない場合は、薬物療法を行います。ベンゾジアゼピン受容体作動薬(ベンゾジアゼピン系・非ベンゾジア ゼピン系薬剤)がよく使用されますが、高齢者はベンゾジアゼピン系薬剤の感受性が高まり、代謝・排泄の遅延により副作用が現れやすく、認知機能低下、転倒・骨折、日中の倦 怠感、せん妄等のリスクがあります。

睡眠薬のリスク・ベネフィットのバランスを考え、作用時間が短く、筋弛緩作用の少ない薬剤を選択し、長期投与しないことが理想です。また、最低用量から開始し、 低用量で維持することが望まれます。

不眠症の高齢者は、長期投与や高用量投与、多剤服用(ポリファーマシー)に陥りやすいため、漫然とした不適切な処方でないか定期的に見直し、寛解後は減薬・休薬が望まれます。ただし、ベンゾジアゼピン受容体作動薬は離脱症状がみられることがあるので、 自己判断で中止せず、漸減法や隔日法、短時間型から長時間型からの変更等を行うことが必要です。

無論、西洋薬以外にも寝つきが悪いタイプの方に例として「抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)」を処方する、といった漢方を用いた不眠治療を行うこともあります。

寝つけないというのは、直前までイライラや不安があり、その延長上で起きていることが多いので漢方を日中に服用してイライラ度を下げ、眠りに導いていく効果を期待して処方すると言う考え方です。

睡眠は長く寝るほど良いわけではなくて、睡眠のサイクルを守ることが大事です。

眠りたいのに眠れない。そのつらさを避けたくて「今夜、眠る」ために薬を服用される方もいらっしゃるでしょう。ですが、不眠と縁を切るには、眠れない原因を取り除き、自然に眠りにつけるコンディションをつくることも大事だと考えて頂ければ幸いです。

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