関節軟骨の基礎的なお話
ここでは関節軟骨の構造についてお話します。
関節軟骨の構造と病理
関節軟骨は骨の端を覆い、荷重に抗することと滑らかな関節運動を担っています。関節軟骨は成長軟骨と同様に、軟骨細胞が細胞外マトリックスに散在する構造をとっています。
軟骨細胞が細胞外マトリックスを産生・維持し、細胞外マトリックスの物質特性が軟骨のメカニカルな機能を担っています。
軟骨細胞外マトリックスは主にII型コラーゲン分子が会合してできる軟骨コラーゲン細繊維が3次元的にネットワークを構成し、その間隙をプロテオグリカンが充填しています。
→この構造が軟骨組織に抗張力と抗圧縮力を付与しています。
このような構造を持つ軟骨は「硝子軟骨」と呼ばれています。硝子軟骨は無血管組織であるために、治癒能力に乏しいのです。
損傷を受けると、元の硝子軟骨ではなく、瘢痕組織を含む繊維軟骨が形成されます。この繊維軟骨は硝子軟骨に比べ機能的に劣り、やがて失われ末期の変形性関節症となってしまいます。
可動関節の関節面を形成する骨端は硝子軟骨組織で覆われてます。その軟骨組織が関節の衝撃緩衝機能や低摩擦性潤滑機能を発揮するわけです。
関節軟骨自体には、血管・リンパ管・神経は存在せず、ヒアルロン酸と糖タンパクを豊富に含む滑液によって栄養されています。関節軟骨組織自体には組織修復機能は存在しません。
関節軟骨の基質
関節軟骨は、その組織量の95%は基質が占め、残りの5%は細胞成分です。基質は、湿重量の70~80%は水で、そのほかはコラーゲン・プロテオグリカンや非コラーゲン性糖タンパクなどで構成されています。
コラーゲン
組織に力学的強度を与えています。コラーゲンたんぱく質はグリシン(G)-アミノ酸(X)-アミノ酸(Y)の3残基ごとの繰り返し構造を有し、このペプチド鎖は「α鎖」と呼ばれ、3本集まって右巻きらせん構造のトロポコラーゲンを形成しています。II型コラーゲンは、硝子軟骨中のコラーゲンの90~95%を占めています。3本の同じα鎖で構成され、これらが集まってコラーゲン細繊維を作り、繊維性コラーゲンを形成してます。軟骨にはII型コラーゲンのほかにも全コラーゲンの1~2%を占めるⅣ型コラーゲン、3%を占めるXI型コラーゲンなどが存在しています。
プロテオグリカン
プロテオグリカンは、コアたんぱく質に1つ以上のグリコサミノグリカン鎖が櫛状に結合したもので、軟骨ではヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸が存在しています。ヒアルロン酸は生体内に広く存在するプロテオグリカンで、空隙を占拠したり、潤滑性を与えています。
非コラーゲン性糖タンパク質
非コラーゲン性糖タンパク質としてcartilage oligomeric matrix protein(COMP)が関節軟骨に存在してます。COMPは、II型コラーゲンを結合し、コラーゲンネットワークを安定させていると考えられています。