院長コラム

2021年インフルエンザの流行とワクチン接種

昨年の今頃は新型コロナとインフルエンザの同時流行が懸念され、ガクガクブルブルしておりましたが、蓋を開けてみれば私が医師になって初めてというほどインフルエンザの患者さんはいませんでした。
ロックバンドTHE YELLOW MONKEYの「JAM」という曲の歌詞に「乗客に日本人はいませんでした いませんでした いませんでした」という部分があるのですが、「患者さんにインフルエンザはいませんでした いませんでした いませんでした」となっておりました。

最近、よく聞かれます。
「今年はインフルエンザ・・・流行するの?」
「インフルエンザのワクチン、接種したほうが良いの?」

上図は横浜市のインフルエンザ流行状況です。注目すべきは2020年のデータです。例年、1月~2月にインフルエンザの報告数はピークを迎えます。2020年のピークは例年と同様1月~2月でしたが、明らかに報告数は例年よりも少ないです。

なぜここまで激減した?
新型コロナウイルス感染症の流行以降、インフルエンザは激減しています。
やはり新型コロナへの感染対策として行われたマスク着用、ソーシャル・ディスタンス、手洗いはインフルエンザにも有効であり、学校や介護施設等の人が多く集まる場所でのインフルエンザの流行抑制につながったと考えるのが普通です。海外旅行する人も激減したことから日本に持ち込まれるウイルスが少なかったこともそうかもしれません。

2021年の冬季、インフルエンザは流行するでしょうか?
日本でのインフルエンザ流行を予測する上で参考になるのは、現在冬の場所です。
どこかというと南半球です。オーストラリアを例にしてみると、例年5月~10月にかけてインフルエンザが流行します(日本と逆)。図を見ると2020年と同様に、2021年もインフルエンザ報告数は極めて低い状況です。

この結果から、日本でも2021-2022はインフルエンザが流行しないという予測はできるかもしれません。
この流れで、「今年もインフルエンザは流行らないからワクチン接種しなくてOK!!」と考えるのは早計ですし、断言できません。

なぜかというと、答えは今年の夏にある疾患が大流行したことから考察します。
ある疾患というのは、「RSウイルス感染症」です
下図は横浜市のRSウイルス感染症の流行状況です。6月以降、ものすごく流行しました。

2020年のデータを見てください。ほぼフラット、流行していません。
RSウイルス感染症は、通常2歳までの間に一度は感染します。しかし、2020年に流行していないことからRSウイルスに免疫を持つ人が減っていたことで、今年は大流行したと考えられます。新型コロナ流行中にRSウイルスに免疫を持たない子どもが増え、保育園等で大流行につながったと考えられます(当院の外来も幼稚園、保育園の乳幼児さん患者さんが多かったです)。これも新型コロナへの感染対策として行われたマスク着用、ソーシャル・ディスタンス、手洗いの影響と言えます。

話を戻します。
なにが言いたかったかというと、横浜では2019-2020、2020-2021という2つのシーズンでインフルエンザの大きな流行がみられていません。それは、2年間に渡りインフルエンザに対する免疫を持たない人がいると言うことです。毎年、流行予測した株を予防接種に盛り込むとは言え、次のインフルエンザが流行する際は、キャリアハイになる可能性があります。
そこを考えると、やはりインフルエンザの流行に備えて今シーズンもインフルエンザワクチンを接種することが推奨されると考えます。
そもそもインフルエンザの予防接種を打ったほうが良いかどうかはこちら
現在、今季の入荷・納品が若干不透明な状況です。新型コロナほどの争奪戦にはならないと思いますが各医療機関の予防接種予約状況等を確認することをお勧めします。

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