院長コラム

骨粗鬆症と糖尿病

骨粗鬆症は超高齢社会の日本においては切り離せない疾患になってきています。
糖尿病をはじめとする生活習慣病が骨折を増加させることが明らかになってきました。

骨折と関係する生活習慣病でわかってきたものには以下のようなものがあります。

  1. 糖尿病(2型)、肥満、メタボリックシンドローム
  2. 慢性腎臓病(CKD)
  3. サルコペニア(痩せ)、フレイル(虚弱)、認知症
  4. 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
  5. 脂質異常症、高血圧、動脈硬化症
  6. 睡眠障害

日本骨粗鬆症学会「生活習慣病骨折リスクに関する診療ガイドライン」より

現在は、通院中の疾患に取り組みながら長生きを可能としたことで骨の健康を考える必要が出てきたのです。

骨粗鬆症ってなに?

イメージは「骨がすかすか」。
原因としては、加齢、閉経、栄養不良、運動不足等が挙げられます。
特に女性は閉経後、女性ホルモンの減少により骨が弱りやすくなっていきます。
男性に比べて筋肉量も少ないので高齢女性では骨が減りやすくなり、骨密度を調べると、83歳過ぎれば、ほぼ女性は骨粗鬆症です。
院長コラム「骨粗鬆症のお話」

骨粗鬆症の骨折は脆弱性骨折です。脆弱性骨折とは、健康な人であれば折れないような軽いチカラで折れる骨折のことです。

骨粗鬆症の注意すべき点は、1回骨折が治っても、それで終わりではないということです。

再骨折の危険度は約2倍になり、骨折の回数が増えるほど大きくなっていきます。これを
「骨折ドミノ」と呼びます。骨折自体で亡くなることはまれですが、骨折が原因で心肺機能の低下をきたし、それが命を落とす原因になっていきます。

糖尿病で骨が弱くなるのはなぜ?

「骨質の低下」です。

骨はカルシウムだけでできているわけではありません。
骨を形成する細胞、タンパク質、ミネラルなどの無機質が十分に蓄えられ、骨の細かい構造が健全な状態に保たれて、骨の強さに繋がります。

骨のしなやかさを保つためには、破壊と再生を繰り返す骨の新陳代謝が行われなければなりません。

血糖が高いと、骨を新しくする力が落ちてしまい、骨の新陳代謝を起こしにくくします。
また、骨の中に最も多く存在するコラーゲン線維が高血糖により不健康になります。

骨の新陳代謝が落ちるので、古くて質の悪い骨が残るため、骨質が落ちます。
骨質が落ちると、骨密度が高くても外力には弱く、簡単に折れます。本当に簡単に折れます。
長時間車に乗っているだけで腰椎圧迫骨折を来す方もいます。
これが糖尿病患者さんで骨折が増える大きな原因と考えられています

糖尿病だと骨が折れやすいのか?

糖尿病患者さんのすべてが折れやすいというわけではありません。
ちょっとした条件があります。

糖尿病患者さんで骨折の危険度が高い条件
危険因子 条件
糖尿病罹病期間 10年以上
HbA1c 7.5%以上
喫煙 あり
糖尿病治療薬 インスリン使用/チアゾリジン薬
転倒リスク あり
サルコペニア あり

日本骨粗鬆症学会「生活習慣病骨折リスクに関する診療ガイドライン」より

1型糖尿病(体からインスリンが出にくくなる)は特に危険度が高いと言われています。
インスリン不足そのものが、骨の健康にとって良くないと言われているからです。
上図で誤解しないでほしいのは、インスリン注射が悪いわけではないと言うことです。

高血糖による骨質の低下

終末糖化産物(AGE)

高血糖が続くと終末糖化産物(AGE)が体に蓄積されます。
このAGEのひとつであるペントシジンが骨のコラーゲン線維にたまりやすく、ペントシジンがたまったコラーゲン線維が増えると、まるで錆びついた鉄筋コンクリートのように、しなやかさに欠けた脆い骨になります。終末糖化産物による骨質の低下と言えます。

AGEは骨だけではなく、体中に蓄積され糖尿病合併症を進める原因にもなります。
言い換えると、糖尿病合併症が多い患者さんは骨にもAGEがたまっている可能性が高いと考えられます。

また、糖尿病合併症そのものが骨折の危険を高くします。
糖尿病性網膜症の存在→見づらい!→視力障害による転倒の危険性を高めてしまう。
末梢神経障害の存在→足の感覚がよくわからない!→転びやすく、怪我しやすくなる。
糖尿病性腎症の存在→腎機能の低下が進み、カルシウムの吸収悪化が起きる。

骨粗鬆症による骨折は、単なる怪我だけではなく、慢性的な骨の不健康さの結果として起こる病気と考えたほうが良いでしょう。

骨粗鬆症の骨折を防ぐ治療法はなにかないの?

薬を使用するという答えは間違いではありません。しかしながら、骨粗鬆症のフォローをする方は少なからず何らかの薬剤を服用されています。ここで骨粗鬆症に対しての内服治療を考えると、どうしても多剤併用となるケースが多いのです。
骨粗鬆症治療の基本は健康的な生活習慣です。くすりファーストではありません。

私が骨粗鬆症で服薬治療を行う患者さんには、いくつかの条件を設けています。それ以外の方は基本的には健康的な生活習慣と転びにくい身体作りが治療の基本です。

骨にとっての健康的な生活習慣とは「適切な運動」、「適切なエネルギー獲得」、「十分なタンパク質摂取」です。骨にとっての悪い習慣は喫煙、過度な飲酒、過剰なカフェイン、体重減少となります。糖尿病の生活指導と似ている部分が多く重なり合っていると思います。

体重減少?

体重減少は良いんじゃないの?と思われる方は多いのではないでしょうか。
実はからくりがあります。それは、骨は重力によって強さを増すということです。
宇宙から地球に帰還した宇宙飛行士がひとりで歩けないシーンを見たことがある方は多いのではないでしょうか。


ひとりで歩けない・・・


(現在は、こうならないように元気に宇宙から帰還できているようです)
健康な方でも体重が減ると骨密度は少し下がります。体重減少は骨と一緒に筋肉も減るので、さらに骨が弱くなるのです(筋肉量を落とさずに行う減量とは別です)。
では、骨を強くするには太れば良いのでしょうか?
体重増加と骨の強化には2つの条件が存在します。それは、

  1. 骨と筋肉を中心に体重を増やす(脂肪は増やさない!)。
  2. 生活習慣病の撲滅

この2つが条件となります。

1および2をクリアする方法はなにかと言いますと、「運動療法」です。
これは転倒予防にも繋がります。
筋肉と共に関節の柔軟性や反射神経の維持が非常に重要です。
日本整形外科学会を中心に作られたロコモーショントレーニングは多くの方が無理なくできますのでオススメです。

こうした運動で筋肉を刺激することは、基礎代謝を上げ、糖尿病のような生活習慣病にとっても良い影響を与えます。

骨粗鬆症対策を踏まえた食事

糖尿病を悪化させないためには適切な糖質制限と栄養バランスを考えることが大事です。
ご高齢の患者さんに気をつけていただきたいのが、タンパク質の摂取量です。
年齢と共に筋肉量は減ります。その現象に抗うためには良質のタンパク質を摂取する必要があります。

また、カルシウムやビタミンDの摂取量も大事です。日本人の食生活では乳製品の摂取量が少ないためどうしてもカルシウム不足に陥りがちです。
日本栄養士会がカルシウムを無理なく摂取するために「乳和食」という提言も行っています。

糖尿病の治療のゴールとは下図の通りです

糖尿病の治療はゴールがわかりにくく、時に心が折れかけるものです。
人生を健やかで明るいものにするためにも骨の健康にも目を向けてみましょう。

 

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